建築設計の仕事内容とは?年収・きつい理由・未経験からの道と建築士【2026年版】

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未経験からの仕事選びガイド・2026年版

建築設計の仕事とは?施工管理との違い、年収、きつい理由と、新卒・未経験から建築士になる道

住宅、福祉施設、オフィスビル。街に建つ建物は、どれも誰かが図面に描いてから形になります。建築設計は、その図面をつくり、工事が図面どおりに進んでいるかを確かめる仕事です。同じ建設の仕事でも、現場で工事を進める施工管理とは立場が違います。この記事では、設計の仕事の流れ、統計で見る年収、きついと言われる理由、令和2年の制度改正で変わった一級・二級建築士の取り方を、国土交通省・厚生労働省・建築技術教育普及センターの一次情報と、マン天に掲載中の求人をもとに整理しました。

  • 約679万円建築技術者の年収の目安
    (令和7年・編集部計算)
  • 卒業後すぐ指定科目を修めた大卒者が
    一級建築士を受験できる時期
  • 11.4%一級建築士試験の
    総合合格率(令和7年)
  • 約4割事務所に所属する一級建築士
    のうち60代以上(令和6年)
  • 対象:建築を学んだ学生・未経験・設計経験者
  • 新卒向け・経験者向けの設計職求人あり
  • 資格取得支援制度がある求人あり

先に結論:建築設計は「図面をつくる側」、施工管理は「図面どおりにつくる側」の仕事です。設計者は、敷地と法律を調べ、施主の要望を形にした図面をまとめ、確認申請を通し、工事中は図面どおりかを確かめます(工事監理)。令和7年賃金構造基本統計調査では、設計者と施工管理者を含む「建築技術者」の年収の目安は約679万円です。きついと言われるのは、締切前の集中、修正の繰り返し、覚える法律の多さのためで、20代後半から30代前半の残業が長い傾向も統計に出ています。資格の面では、令和2年3月から、指定科目を修めて大学などを卒業すれば、実務経験なしで一級建築士試験を受けられるようになりました(免許の登録には、大学卒で2年以上などの実務経験が必要)。建築を学んだ人は新卒の設計職から、学んでいない人は学校で指定科目を修めるか、実務経験から二級建築士を目指すのが現実的な道です。

この記事の目次
  1. 建築設計と施工管理の違い
  2. 設計の仕事の流れ
  3. 働く場所と仕事の範囲
  4. 年収
  5. きついと言われる理由
  6. 建築士の資格と設計できる範囲
  7. 令和2年の改正と取り方
  8. 新卒・未経験からの道
  9. これからの需要
  10. 向き不向き
  11. 求人の見方と面接
  12. よくある質問
  13. まとめ

建築設計とは?施工管理との違いは「図面をつくる側か、図面どおりにつくる側か」

建物づくりに関わる技術者は、大きく「建物を考えて図面にする人」と「その図面のとおりに建物をつくる人」に分かれます。建築設計は前者、施工管理は後者の仕事です。

建築士法は、「設計」を「その者の責任において設計図書を作成すること」と定めています。設計図書とは、工事に必要な図面と仕様書のことです。同じ法律は「工事監理」も定めていて、これは「その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること」をいいます(建築士法第2条)。つまり建築設計の仕事は、図面を描いて終わりではなく、工事の段階まで続きます。

一方の施工管理は、工事を請け負った建設会社の側で、工程・品質・安全・原価を管理しながら工事を進める仕事です。施工管理そのものは「施工管理・現場監督——未経験から現場をまとめる仕事の中身・年収・資格・会社選び」で、文系から土木の施工管理を目指す道は「施工管理は文系でもなれる?」で解説しています。ここでは設計の側から違いを整理します。

項目建築設計施工管理
立場施主(建物を建てる人)の要望を図面にする側工事を請け負い、図面どおりに建物をつくる側
主な成果物基本設計・実施設計の図面、仕様書、確認申請の書類工程表、施工計画書、施工図、工事写真や検査の記録
工事中の役割工事監理(工事が設計図書どおりかを確かめる)職人や専門工事会社を手配し、工事を進める
中心になる資格一級・二級・木造建築士(建築士法)建築施工管理技士(施工管理技術検定)
主な仕事場事務所での作図と打ち合わせが中心。工事中は現場にも行く現場が中心。事務所での書類仕事もある

「監理」と「管理」は別の仕事:工事監理(設計者の側)と施工管理(施工者の側)は、どちらも現場で図面と工事を見比べますが、確かめる立場が違います。求人票では工事監理を「設計監理」と書くこともあります。たとえば栗本建設工業の設計職(中途)の求人は、仕事内容に「工事中の施工状況の確認、設計監理」と書いています。設計から工事中の確認までを同じ設計者が受け持つかどうかは会社によって違うので、求人の仕事内容をよく読みましょう。

建築設計の仕事の流れ|調査から完成まで

建物の種類や会社によって細かな違いはありますが、設計の仕事はおおむね次の順で進みます。マン天に掲載中の栗本建設工業(東京支店)の新卒向けの設計職の求人でも、仕事内容に「敷地条件や建築に関する法律の調査」「お客様の要望を反映した基本設計」「工事に必要な実施設計の図面作成」「行政や検査機関への各種申請」「図面通りに工事が進んでいるかの確認」が並んでいます。

敷地と法律の調査敷地の広さや形、道路との関係、用途地域などを調べ、どんな大きさ・用途の建物が建てられるかを確かめる。建築基準法や自治体の条例など、建物に関わる決まりを読み込む段階です。
基本設計施主の要望(部屋の数、使い方、予算など)を聞き、建物の形や間取り、敷地の中での配置を考える。図面や模型、完成予想の絵を使って打ち合わせを重ね、方向性を固めます。
実施設計工事ができるところまで図面を細かく詰める。仕上げの材料、窓や扉の種類、寸法の細部まで決め、構造(柱や梁など)や設備(電気・空調・給排水など)の担当者と調整します。工事費の見積もりの元になる図面でもあります。
確認申請などの手続き建物が建築基準法などに合っているかの確認を、行政や検査機関に申請する。指摘があれば図面を直します。
工事監理工事が始まったら、現場で図面どおりに工事が進んでいるかを確かめる。現場からの質問に答え、変更が必要になれば図面を直します。
完成・引き渡し完成時の検査に立ち会い、施主に建物を引き渡します。

設計の中には、建物の形や間取り、仕上げを決める設計(一般に「意匠設計」と呼ばれます)、建物の骨組みを計算して決める構造設計、電気・空調・給排水などを決める設備設計があります。建築士法も「構造設計」と「設備設計」を分けて定義しています(第2条第7項)。大きな建物では、それぞれの担当者がチームで1つの建物を設計します。

「建築設計=一日中机で絵を描く仕事」と思われがちですが、実際は打ち合わせ、法律の確認、申請、現場の確認と、人とやりとりする時間がかなりあります。栗本建設工業の求人も「設計の仕事は、ただ図面を描くだけではありません」と書き、お客様や施工担当者と意見を交わしながら建物を完成へ導く仕事だと説明しています。

働く場所で仕事の範囲が変わる|設計事務所・建設会社・住宅会社

建築設計の仕事をしている人は、どんな職場にいるのでしょうか。建築技術教育普及センターが公表している、令和7年の一級建築士試験「設計製図の試験」の合格者3,988人の職域は次のとおりです。

職域構成比読み方
建設業34.9%工事を請け負う会社。設計部門のある会社も多い
建築士事務所29.6%設計・工事監理を受け持つ事務所
住宅メーカー14.3%戸建て住宅などを中心に扱う会社
官公庁等6.3%公共建築や建築行政に関わる職場
不動産業4.1%建物を企画・所有する側の会社
その他10.8%学生・研究生、研究教育など

同じ合格者の職務内容は、建築設計が40.9%、施工管理・現場管理が18.6%、構造設計が6.8%、工事監理が4.8%、行政が4.8%でした。建築士の資格を取る人の働き先は設計事務所だけではなく、建設会社や住宅会社にも広がっていて、施工管理の仕事をしながら建築士を取る人もいることがわかります。

設計事務所(建築士事務所)

設計と工事監理を受け持つ。施主から依頼を受けて設計し、工事は別の建設会社が請け負う形が多い。事務所ごとに得意な建物の種類がある。

建設会社の設計部門

工事も請け負う会社の中で設計を担当する。施工を担当する部門が同じ会社にあるため、設計した建物が建つまでの過程を近くで見やすい。

住宅会社・工務店

戸建て住宅などの設計を担当する。お客様との打ち合わせの比重が大きく、間取りの提案や仕様の相談が仕事の中心になりやすい。

官公庁など

公共建築の発注や、建築確認などの行政の仕事。令和2年の改正で、建築行政の仕事も建築士の実務経験に数えられる範囲が広がった。

栗本建設工業は、事業内容を「総合建設業」としている会社です。東京支店の設計職の求人は、住宅・福祉施設・オフィスビルなどの建築設計を手がけると書き、新卒向けの求人では「工事中の確認まで幅広く携わります」としています。設計と工事の担当がどう分かれているかは会社ごとに違うので、面接で確かめておくと入社後の働き方を想像しやすくなります。

学んだ建築を仕事にする、新卒の設計職求人

栗本建設工業株式会社 東京支店の設計職(大学新卒)の正社員求人です。対象は建築系の学部・学科で学んでいる方で、給与は月給280,000円~。勤務時間は8:30~17:30(休憩60分)、月平均残業時間は約8時間、年間休日125日(土曜・日曜・祝日)と書かれています。入社後1ヶ月の新入社員研修、入社3年目までの若手技術者研修(本社で年4回)、入社5年目までの若手勉強会(東京支店で月1回)があります。

新卒の設計職の求人を見る

年収|統計の「建築技術者」と求人で見る

建築設計だけを取り出した公的な賃金統計はありません。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では、建築設計の仕事は「建築技術者」という職種に入ります。同調査の「役職及び職種解説」によると、この職種には建築士、建築設計監督技術者、建築構造設計技術者、建築設備設計技術者のほか、建築施工管理技術者や建築現場監督も含まれます。設計者と施工管理者をまとめた数字として読んでください。

項目建築技術者(企業規模10人以上)
きまって支給する現金給与額(月)45.62万円
うち所定内給与額(月)40.75万円
年間賞与その他特別給与額131.61万円
年収の目安(計算値)約679万円
月の実労働時間183時間(所定内166時間+超過17時間)
平均年齢・勤続年数43.4歳・12.9年

数値の出典と計算方法:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」一般労働者・職種(小分類)別、男女計、企業規模10人以上の値です。きまって支給する現金給与額は、残業代などを含む毎月の給与です。年収の目安は、その12か月分に年間賞与その他特別給与額を足して編集部が計算しました。平均年齢43.4歳・勤続12.9年の人たちの平均なので、経験の浅い人の年収とは違います。

年齢で見ると、20代後半から大きく伸びる

同じ調査の年齢階級別の表(職種の第5表)から、建築技術者の20〜40代前半を抜き出しました(企業規模10人以上)。

年齢毎月の給与(きまって支給)年間賞与など年収の目安(計算値)月の超過労働時間
20〜24歳30.44万円46.19万円約411万円20時間
25〜29歳38.21万円92.45万円約551万円28時間
30〜34歳44.00万円108.31万円約636万円28時間
35〜39歳46.11万円156.82万円約710万円20時間
40〜44歳49.57万円152.64万円約747万円18時間

年間賞与は前の年1年間の支給額なので、20〜24歳には、前の年に勤めていなかった期間のある人が含まれ、低めに出ます。また、年収の目安は残業代を含む毎月の給与から計算しているため、残業の多い年代ほど高く出ます。25〜34歳は月の超過労働時間が28時間で、全年齢の平均(17時間)より長くなっています。

会社の規模による差

企業規模毎月の給与(きまって支給)年間賞与など年収の目安(計算値)月の超過労働時間
1,000人以上56.04万円187.99万円約860万円23時間
100〜999人44.75万円122.37万円約659万円23時間
10〜99人40.04万円104.98万円約585万円10時間

規模の大きい会社ほど給与と賞与が高い一方で、超過労働時間も長い傾向があります。1,000人以上の会社の25〜29歳では、月の超過労働時間が39時間でした。年収だけでなく、働く時間とあわせて比べることが大切です。

新卒の初任給と、掲載中の求人の給与

同じ調査で、令和7年の新規学卒者(大学卒)の賃金(6月分の所定内給与額)は、男女計で26.23万円でした。これは職種を問わない全体の値です。マン天に掲載中の栗本建設工業の設計職の求人は、次のとおりです。

求人給与求人ページに書かれている内容
栗本建設工業 東京支店 設計職(大学新卒)月給280,000円~収入例:月給300,000円(入社5年目・27歳)。昇給年1回、賞与年2回、交通費支給(全額)
栗本建設工業 東京支店 設計職(中途)月給300,000円~420,000円30~45歳の目安(各種手当は除く)。経験・資格・年齢を考慮の上で決定。昇給年1回、賞与年2回、交通費支給(全額)

統計の所定内給与額と求人の月給は、含まれる手当の範囲が同じとは限らないので、比べるときは目安にとどめてください。給与欄の見方は「求人の給与欄の読み方完全ガイド」で解説しています。

「建築設計はきつい」と言われる5つの理由と実際

建築設計は、自分が考えた建物が街に残る、やりがいの大きな仕事です。ただし、きつさもはっきりあります。よく挙がる理由を正直に書き、そのうえで続けやすい条件を整理します。

1.締切の前に仕事が集中する

設計の仕事には、施主への提案の日、確認申請の日、工事の着工日といった動かしにくい日付があります。その前に図面をそろえる必要があるため、締切前に仕事が集中しやすくなります。統計でも、建築技術者の25〜34歳は月の超過労働時間が平均28時間と、ほかの年代より長くなっています(施工管理者を含む値です)。

2.修正が何度も続く

基本設計の段階では、打ち合わせのたびに施主の要望が変わることは珍しくありません。予算に合わせて形を見直したり、法律の制限で間取りを変えたりと、描いた図面を何度も直します。時間をかけた案が採用されないこともあり、気持ちを切り替える力が求められます。

3.覚えることが多く、責任が重い

建築基準法などの法律、構造、設備、材料、工事の方法まで、設計者が知っておくべき範囲は広く、一級建築士試験の学科も「計画」「環境・設備」「法規」「構造」「施工」に分かれています。一定の規模を超える建物は、建築士でなければ設計も工事監理もできない決まり(建築士法第3条〜第3条の3)があり、図面には設計者としての責任が伴います。

4.制度の変化についていく必要がある

2025年(令和7年)4月には、新築の住宅・建築物の省エネ基準への適合義務化と、いわゆる「4号特例」の見直しを含む改正建築物省エネ法・建築基準法が全面施行されました(国土交通省)。国土交通省の設計者向けの案内では、木造戸建住宅などでも、確認申請の際に構造・省エネ関連の図書の提出が必要になるとしています。法律が変わるたびに、設計者は新しい基準を学び、図面や計算をそろえ直します。

5.一人前になるまでに時間がかかる

建築の基本を学んだ新卒でも、実際に建つ建物の図面をまとめられるようになるには経験が要ります。栗本建設工業の新卒向け求人も「目指すのは、5年で一人前の技術者!」と書き、入社5年目までの研修・勉強会を用意しています。最初から大きな建物を任されるわけではないので、焦らず積み上げる姿勢が求められます。

続けやすい職場の条件:月平均の残業時間が求人に書かれている、締切前に応援が入るなどチームで設計を進めている、研修や勉強会の期間と内容が決まっている、資格取得の支援がある、担当する建物の種類が自分の興味と合っている。この条件がそろうほど、建築設計は長く続けやすくなります。栗本建設工業の2つの設計職の求人は、どちらも月平均残業時間を約8時間と書いています。

建築士の資格|一級・二級・木造で設計できる範囲が違う

建築士は建築士法にもとづく資格で、一級建築士は国土交通大臣、二級建築士と木造建築士は都道府県知事の免許を受けます(建築士法第4条)。建築技術教育普及センターは、一級建築士はすべての構造・規模・用途の建築物、二級建築士は比較的小規模な建築物、木造建築士はより小規模な木造建築物の設計・工事監理ができると説明しています。

どの規模から建築士が必要になるかは、建築士法第3条〜第3条の3で決まっています。新築の場合の主な線引きは次のとおりです。

必要な資格主な建物(新築の場合)
一級建築士でなければ設計・工事監理ができない学校・病院・劇場・映画館・観覧場・公会堂・集会場(オーディトリアムを有しないものを除く)・百貨店で延べ面積500㎡超/木造で高さ16m超または地階を除く階数4以上/鉄筋コンクリート造・鉄骨造などで延べ面積300㎡超、高さ16m超または地階を除く階数4以上/延べ面積1,000㎡超かつ階数2以上
一級または二級建築士でなければできない上の建物以外で、鉄筋コンクリート造・鉄骨造などの延べ面積30㎡超/延べ面積100㎡(木造は300㎡)超または階数3以上
一級・二級・木造建築士でなければできない上の建物以外の木造で、延べ面積100㎡超

増築・改築や大規模の修繕などでは、その部分を新築とみなして判断します。都道府県が条例で別の面積を定めている場合もあります(いずれも同じ条文)。建築士でない人が建築士やまぎらわしい名称を名乗ることも禁じられています(第34条)。

一級建築士になってから広がる道

構造設計一級建築士

一級建築士として5年以上構造設計の業務に従事したあと、登録講習機関の講習を修了して申請できる(建築士法第10条の3)。一定の規模以上の建物の構造設計に関わる。

設備設計一級建築士

一級建築士として5年以上設備設計の業務に従事したあと、講習を修了して申請できる(同じ条文)。

管理建築士

建築士事務所を管理する建築士。建築士として3年以上の設計などの業務に従事したあと、講習を修了した建築士でなければならない(第24条)。

定期講習

建築士事務所に属する建築士は、法律で定められた期間ごとに定期講習を受ける(第22条の2)。資格を取ったあとも学び続ける仕事。

令和2年の改正で変わった建築士の取り方

建築士の取り方は、2018年(平成30年)12月14日に公布された「建築士法の一部を改正する法律」が、2020年(令和2年)3月1日に施行されたことで大きく変わりました。国土交通省は、それまで試験を受ける条件だった実務経験を免許登録の条件に改め、原則として、試験の前後にかかわらず免許登録の際までに積んでいればよいこととしたと説明しています。

時期大学で指定科目を修めて卒業した人が一級建築士になる流れ
改正前卒業後に実務経験を積み、そのあとで受験。合格後に免許登録
改正後(令和2年3月1日から)卒業後すぐ受験できる。実務経験は試験の前後に分けて積んでもよく、合わせて2年以上あれば免許登録できる

受験資格と免許登録の条件

資格受験できる人(主なもの)免許登録に必要な実務経験
一級建築士大学・短期大学・高等専門学校などで指定科目を修めて卒業した人/二級建築士/建築設備士など大学卒は2年以上、短期大学(3年)卒は3年以上、短期大学(2年)・高等専門学校卒は4年以上、二級建築士は二級建築士として4年以上
二級建築士・木造建築士大学・短期大学・高等専門学校・高等学校などで指定科目を修めて卒業した人/建築の実務経験が7年以上の人大学・短期大学・高等専門学校卒は不要、高等学校卒は2年以上、実務経験だけで受験する人は7年以上(受験の条件として必要)

表は国土交通省のパンフレット「新しい建築士制度の概要について」の整理です。建築技術教育普及センターによると、実際に必要な実務の年数は、学校で修めた指定科目の単位数でも変わります。たとえば一級建築士では、大学で修めた単位数が60単位なら卒業後2年、50単位なら3年、40単位なら4年の実務経験が免許登録に必要です。二級建築士では、高校で20単位を修めた人は卒業後すぐ受験でき、15単位の人は1年の実務経験を経てから受験できます。自分の学校の科目が指定科目にあたるかは、同センターの学校別の一覧で確かめられます。

実務経験として数えられる仕事が広がった

同じ改正で、実務経験として数えられる仕事の範囲も広がりました。国土交通省のパンフレットによると、建築物の設計、工事監理、建築工事の指導監督、建築物の調査・評価、建築工事の施工の技術上の管理(建築一式工事・大工工事など)、建築・住宅・都市計画の行政、建築の教育・研究などが対象です。施工管理の経験も数えられるので、施工管理として働きながら建築士を目指す道もあります。

一方で、建築士事務所での設計の業務でも「単なるトレースである業務」は除かれます。大学院でのインターンシップは対象に含まれます。なお、この見直しで新しく加わった実務は、令和2年3月1日以降に行ったものから数えられます。

試験の中身と合格率

建築士試験には「学科の試験」と「設計製図の試験」があり、学科に合格した人だけが製図を受けられます。令和2年以降に学科に合格した人は、その後に行われる5回の試験のうち3回、製図を受けられます(建築技術教育普及センター)。一級建築士の学科は、計画(20問)、環境・設備(20問)、法規(30問)、構造(30問)、施工(25問)の四肢択一式で、製図はあらかじめ公表される課題の建物について、6時間30分で設計図書を作成します。

試験(令和7年)学科の試験設計製図の試験総合合格率
一級建築士実受験者27,489人、合格4,529人(16.5%)実受験者11,381人、合格3,988人(35.0%)11.4%
二級建築士実受験者16,383人、合格6,698人(40.9%)実受験者10,006人、合格4,645人(46.4%)22.6%

改正の影響は、合格者の年齢にも表れています。令和8年の一級建築士の学科の試験の合格者7,619人のうち、23歳以下が19.4%、24〜26歳が30.2%で、平均年齢は29.8歳でした。大学を卒業して間もない年代が合格者の半数近くを占めています。

新卒・未経験から建築設計になる道

建築設計の入口は、建築を学んできたかどうかで大きく変わります。自分に近い道を確かめましょう。

道1:建築系の学部・学科から新卒で入る

もっとも一般的な道です。大学などで指定科目を修めて卒業すれば、卒業した年から一級建築士試験を受けられます。栗本建設工業の設計職(大学新卒)の求人は、対象を「建築系の学部・学科で学んでいる方」とし、「建築士の資格取得を目指したい方」を歓迎しています。福利厚生には「資格取得支援制度(規程あり/一級建築士、一級建築施工管理技士など)」があります。

道2:設計の実務経験者として転職する

すでに設計の経験がある人は、経験を生かして転職できます。ただし応募の条件は求人ごとに違います。栗本建設工業の設計職(中途)の求人は、応募資格を「建築系学科を卒業された方」「建築設計の実務経験をお持ちの方」「一級建築士(年齢に応じて必須または推奨)」としています。同じ会社の設計職でも、新卒向けと経験者向けで求められる条件はまったく違うので、求人ページの「対象となる方」を必ず読みましょう。

道3:建築を学んでいない人が目指す

建築を学んでいない人は、正直に言うと遠回りになります。一級建築士の受験には、指定科目を修めた学歴か、二級建築士などの資格が必要だからです。考えられる道は次の2つです。

  • 学校で指定科目を修める:大学・短期大学・専修学校など、指定科目を修められる学校に入り直す。卒業すれば二級・一級建築士の受験資格が得られる(必要な実務の年数は学校の種類と単位数で変わる)。
  • 実務経験から二級建築士を目指す:建築の実務経験を7年以上積むと、建築の学歴がなくても二級建築士を受験できる。二級建築士になれば一級建築士試験を受けられ、二級建築士として4年以上の実務経験で一級建築士の免許登録の条件も満たせる。

実務経験から目指す場合は、自分の仕事が実務経験として数えられるかが大切です。前の章のとおり、単なるトレースは対象外です。設計の補助から入るときは、どんな業務を任されるのかを面接で確かめましょう。施工管理など、実務経験に数えられる仕事から入る道もあります。

社会人から目指す人へ:建築士法が定める受験資格に、年齢の条件はありません。ただ、学校に入り直す時間と費用、実務経験の年数を合わせると、資格を取るまでに長い時間がかかります。まずは施工管理など建築に関わる仕事に入り、働きながら道を選ぶのも一つの方法です。会社が費用を出す資格取得の制度を使うときの注意点は「資格取得支援制度とは?」で解説しています。

これからの需要|建築士の高齢化が進んでいる

国土交通省の資料「建築分野の担い手の動向について」によると、令和6年4月1日時点で、一級建築士の登録数は381,303人です。ただし、建築士事務所に所属する一級建築士の年齢構成を見ると、60代以上が約4割を占め、20代は1.6%、30代は9.7%にとどまります(複数の事務所に所属する人は、事務所の数だけ重複して数えた値)。同じ資料は、いまの傾向が続く場合、事務所に所属する一級建築士の数は30年後に半減する見込み(14.0万人→6.9万人)としています。

担い手の高齢化は、これから建築設計を目指す若い世代が求められる状況ともいえます。さらに、省エネ基準への適合義務化など、設計に求められる中身も増えています。新しい基準を学び続けられる人ほど、頼りにされる場面は増えていくでしょう。

向いている人・慎重に考えたい人

向いている人慎重に考えたい人
建物や街を見るのが好きで、なぜこの形なのかを考えたくなる決まった作業を同じペースで続けたい
人の話を聞いて、それを形にするのが好き自分の案を通すことにこだわり、修正を受け入れにくい
細かい寸法や法律の条文を、根気よく確かめられる細部の確認を面倒に感じる
締切から逆算して段取りを組める締切前に仕事が集中する時期がどうしても受け入れられない
資格の勉強や新しい基準の学習を長く続けられる入社後の勉強はできるだけ避けたい

図面の描き方は、入社後の経験で身につきます。それより大切なのは、施主、構造や設備の担当者、施工管理者、行政など、立場の違う人の話を聞いて1つの建物にまとめる力です。施工管理と迷っている人は、「自分で考えた形を図面にしたいか」「図面を現場で形にしていきたいか」で考えてみてください。

求人の見方と、面接で聞いておきたいこと

  • 対象となる方:新卒向けか経験者向けか。学部・学科、実務経験、建築士の資格の条件
  • 担当する建物:住宅・福祉施設・オフィスビルなど、建物の種類と規模
  • 仕事の範囲:基本設計・実施設計・申請・工事監理のどこまでを担当するか
  • 教え方:研修や勉強会の期間、先輩につく期間、一人前までの目安
  • 資格の支援:受験費用の負担、資格手当、勉強時間への配慮、辞めたときの扱い
  • 残業と休日:月平均の残業時間、年間休日、締切前の働き方
  • 勤務地と転勤:働く支店の場所、転勤の有無
  • 給与の内訳:月給に含まれる手当、残業手当の扱い、賞与の回数

栗本建設工業の2つの設計職の求人は、どちらも勤務時間8:30~17:30(休憩60分)、月平均残業時間約8時間、年間休日125日(土曜・日曜・祝日)で、福利厚生に資格取得支援制度(規程あり)、資格手当、残業手当などが並んでいます。一方で選考の流れは、新卒向けが応募→オンライン会社説明会→適性検査(基礎学力)・支店面接→適性検査(性格診断)・本社面接→内定、経験者向けが応募→書類選考→支店面接(対面)→適性検査(性格診断)及び本社面接(オンライン)→内定と違います。休日・勤務時間の読み方は「求人の休日・勤務時間の読み方完全ガイド」で解説しています。

面接での逆質問の例

  • 入社1年目は、どんな建物の、どの段階の図面を担当しますか
  • 設計から工事監理まで、同じ担当者が受け持ちますか。構造や設備の設計は社内で行っていますか
  • 締切前の残業は、月にどのくらいになりますか
  • 一級建築士の受験の支援は、いつから、どんな内容で使えますか。社内の方は何年目くらいで受験していますか
  • 免許の登録に必要な実務経験の証明は、会社で出していただけますか

志望動機の例(建築学科の学生):大学の設計課題で福祉施設を担当し、使う人の話を聞きながら間取りを考える面白さを知りました。御社が住宅・福祉施設・オフィスビルなど幅広い建物の設計を手がけ、工事中の確認まで設計者が携わる点に魅力を感じています。研修と勉強会で実務の基本を身につけ、早い時期に一級建築士の試験に挑戦したいと考えています。

例文の課題や建物の種類は、自分の経験と応募する求人に合わせて書き換えてください。

面接全体の準備は「転職面接の完全攻略ガイド」、研修の見抜き方は「未経験歓迎の求人で失敗しない研修制度の見抜き方」も参考になります。

東京で建築設計職を募集中(新卒向け・経験者向け)

栗本建設工業株式会社 東京支店の設計職の正社員求人です。住宅・福祉施設・オフィスビルなどの建築設計を担当します。新卒向け(大学新卒・建築系の学部・学科で学んでいる方)と経験者向け(建築系学科卒・建築設計の実務経験あり・一級建築士は年齢に応じて必須または推奨)で応募資格が違うので、それぞれの求人ページで確かめてください。

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2026年10月時点の募集内容です。最新の条件は求人ページでご確認ください。

よくある質問

建築設計は未経験からでもなれますか?

なれますが、建築を学んだかどうかで道が変わります。建築系の学部・学科で学んだ人は、新卒の設計職として入り、働きながら建築士を目指すのが一般的です。建築を学んでいない人は、大学や専修学校などで指定科目を修めて受験資格を得るか、建築の実務経験を7年以上積んで二級建築士を受験する道があります。実務経験として数えられる仕事には決まりがあり、建築士事務所での単なるトレースは含まれません。建築工事の施工の技術上の管理(施工管理)の経験は数えられます。

建築設計と施工管理はどう違いますか?

建築設計は、施主の要望を図面にまとめ、確認申請を通し、工事中は工事が図面どおりかを確かめる(工事監理)仕事です。施工管理は、工事を請け負った建設会社の側で、工程・品質・安全・原価を管理しながら図面どおりに建物をつくる仕事です。どちらも現場で図面と工事を見比べますが、確かめる立場が違います。建築士は設計の側、施工管理技士は施工の側の中心になる資格です。

建築士の資格がなくても設計の仕事はできますか?

会社に入って設計の仕事を始めることはできます。ただし、一定の規模を超える建物の設計と工事監理は、建築士でなければできません(建築士法第3条〜第3条の3)。資格のない新人は、先輩の建築士のもとで図面づくりなどを担当しながら経験を積み、資格を目指すのが一般的です。栗本建設工業の新卒向けの設計職の求人も、建築士の資格を応募の条件にはしていません。

大学を卒業してすぐに一級建築士の試験を受けられますか?

大学で国土交通大臣が指定する建築の科目(指定科目)を修めて卒業した人は、令和2年3月の制度改正から、実務経験なしで一級建築士試験を受けられます。ただし免許の登録には実務経験が必要で、大学卒の場合は2年以上(修めた単位数によっては3年・4年)です。実務経験は試験の前後どちらに積んでもかまいません。令和8年の一級建築士の学科の試験の合格者のうち、23歳以下が19.4%を占めました。

建築設計の年収はどのくらいですか?

令和7年賃金構造基本統計調査では、設計者と施工管理者を含む「建築技術者」の年収の目安は約679万円です(毎月の給与45.62万円の12か月分と年間賞与131.61万円から計算)。年齢で見ると、20〜24歳で約411万円、25〜29歳で約551万円、30〜34歳で約636万円です。会社の規模による差も大きく、1,000人以上では約860万円、10〜99人では約585万円です。残業代を含む毎月の給与から計算しているため、残業の多さでも変わります。

建築設計はきついですか?

締切の前に仕事が集中する、修正が何度も続く、法律や構造など覚えることが多い、といったきつさはあります。統計でも、建築技術者の25〜34歳は月の超過労働時間が平均28時間と、全年齢の平均17時間より長くなっています。一方で、月平均の残業時間を求人に書いている会社や、研修と資格の支援を決めている会社もあります。残業時間、研修、担当する建物の種類を確かめて選ぶと、続けやすい職場を見つけやすくなります。

まとめ|図面をつくる側を選ぶなら、学び続ける覚悟と職場選びが鍵

この記事の要点

  1. 建築設計は「図面をつくる側」。設計(設計図書の作成)と工事監理(図面どおりかの確認)が建築士法で定められた中心の仕事。
  2. 施工管理は「図面どおりにつくる側」。現場で図面と工事を見比べる点は同じでも、確かめる立場が違う。
  3. 令和7年の統計では、設計者と施工管理者を含む建築技術者の年収の目安は約679万円。25〜34歳は残業が長めに出ている。
  4. きつさの中心は、締切前の集中、修正の繰り返し、覚える法律と制度の多さ。
  5. 令和2年3月から、指定科目を修めた大卒者は卒業後すぐ一級建築士試験を受けられる。免許登録には2年以上などの実務経験が必要。
  6. 建築を学んでいない人は、学校で指定科目を修めるか、実務経験7年で二級建築士を目指す。単なるトレースは実務経験に数えられない。
  7. 求人は、新卒向けか経験者向けか、担当する建物と仕事の範囲、研修、資格支援、残業時間で見比べる。

建築設計は、何もない敷地に、人が暮らし、働き、集まる場所を描く仕事です。覚えることは多く、締切前は忙しくなりますが、自分が関わった建物が完成し、街に残っていく手応えは、ほかの仕事ではなかなか得られません。

建築を学んだ人は、まず新卒の設計職で「何を、どこまで任されるか」「資格をどう支えてくれるか」を比べてみてください。学んでいない人は、受験資格までの道のりを確かめたうえで、施工管理など実務経験に数えられる仕事から入る方法も検討してみましょう。

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参照元ソース

※各出典の内容は2026年10月に確認しています。賃金の統計は、建築設計と施工管理などを含む「建築技術者」の値です。求人の内容は掲載時点のもので、変わることがあります。応募前に各出典と求人ページをご確認ください。

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